2013年6月7日金曜日

【開催報告】「脱成長」は危機を救済できるのか? ドイツの社会運動内の論争から学ぶ



 先にお知らせしたとおり、ATTACドイツのマティアス・シュメルツァーさんをお迎えし「”脱成長”は危機を救済できるのか? ドイツの社会運動内の論争から学ぶ」を開催いたしました。
 「脱成長」という、親しみやすいとは言い難い議論であるにもかかわらず。20名以上の方にお集まりいただき、質疑応答も活発に行われました。

 シュメルツァーさんの講演は、昨今日本でも注目を集めているセルジュ・ラトゥーシュの「脱成長」論を批判的に継承し、南北間の公正やジェンダー問題などの要素を加味していくべきだ、という趣旨のものでした。
 シュメルツァーさんによれば、国民一人あたりのGDPがあるラインを越えると、GDPと教授する福利に相関は見られなくなる、と多くの厚生経済学者は考え始めているという点から、「成長」概念の限界が見え始める、というものです。従って「脱成長」はこの一定ラインのGDPを越えた先進国の議論であり、第三世界においてはまだまだ「成長」の必要性は否定できない、とされました。
 その上で、環境上の条件、特に気候変動の問題が「成長」の上限を規定するため、我々は「成長なしに生活レベルを維持すること」を真剣に考慮しなければいけません。もちろんここで問題なのは種々の資源の利用であり、単純に額面上のGDPが延びるかどうかというのは問題ではありません。ただ、環境負荷を減らさずにGDPを成長させていくのは難しいのではないか、ということは言えるでしょう。
 そういった意味では、「脱成長」という言葉そのものが強すぎる主張であるという問題も含んでいます(それゆえに、キャッチフレーズ的に濫用されてしまうということにも、シュメルツァーさんは批判的であるようです)。シュメルツァーさんとしては、Agrowth (無神論 Atheism や アセクシュアル Asexual と同じ接頭辞の A。無成長とでも訳すべきであろうか)ぐらいの言葉がいいのではないか、との意見でした。ドイツ語では「ポスト成長」のような意味合いの言葉を使うとのことです。

 いずれにせよ、賛否両論を含めて、脱成長論議は高い関心を得ており、今後もこういった機会を通じてみなさまと考えて行ければと思っています。
 

2013年5月15日水曜日

【イベント案内】6・4(火) 交流・討論会 「脱成長」は危機を救済できるのか? ドイツの社会運動内の論争から学ぶ

6・4(火) 交流・討論会
「脱成長」は危機を救済できるのか?
ドイツの社会運動内の論争から学ぶ


ATTACドイツのマティアス・シュメルツァーさんを迎えて

日時: 6月4日(火) 午後6時半〜9時
場所: ひと・まち交流館(京阪五条下車、徒歩10分)第5会議室
参加カンパ: 1000円

「アベノミクス」はバブル経済への期待を煽り、大手メディアは株価の値上がりや円安があたかも日本経済に希望をもたらしているかのように言い立てています。
 私たちは、アベノミスクの下での格差の一層の拡大や、労働規制緩和、生活保護見直し等の動きを批判するとともに、雇用や福祉のために経済成長が必要であるという「常識」を疑ってみる必要があります。

 ATTACドイツのマティアス・シュメルツァーさんは、「公正な脱成長の経済をめざして」(2010年7月、共著)の中で、次のように指摘しています。
 「・・・成長だけでは長期にわたって失業の問題を軽減するには十分ではないし(「雇用なき成長」)、成長すれば公共の福祉が増進するわけでもない。・・・公正な脱成長の経済への移行のために、社会的公正と全世界の人々の”善い生活”を可能にするような新しい経済の文法のための闘争が要求される。それは結果としてGDPの縮小につながる。しかし、縮小の必要性のみに焦点を当てるのは還元論であり、危険である。・・・」(全文は http://attac-kansai.com/file/Alexis_201107.pdf

 シュメルツァーさんが来日される機会に、上記の交流・討論会を計画しました。私たちが目指す経済システムのあり方について、ドイツの社会運動の中での論争と重ねながら、考えていきたいと思います。

主催:ATTAC関西グループ/ATTAC京都

※PDF版ちらし

2013年4月17日水曜日

ATTAC京都 研究会「さらなる貿易自由化と食と健康」

以下、転送歓迎
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ATTAC京都 研究会「さらなる貿易自由化と食と健康」
       &運営委員会のお知らせ
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日時:4月27日 18:00〜
場所:ひとまち交流館
  http://www.hitomachi-kyoto.jp/access.html
●資料代:500円
 *事前申し込み不要。誰でも自由に参加できます。

予定
ATTAC京都運営委員会(18:00〜18:30)(どなたでもご参加いただけます)
 議題:ATTAC京都の今後の方針について
  ATTAC京都のこれからの運営について、参加された方で相談したいと考えて 
います。ATTACの運動にこれまで参加されたことのある方や、関心をお持ちの方 
のご参加を歓迎します。

研究会(18:30〜20:30)
「さらなる貿易自由化と食と健康」
 北米自由貿易協定(NAFTA)後、メキシコは米国に次ぐ肥満国となった。物だけ 
でなく投資も規制(緩和)も押し寄せる今日の自由貿易協定によって、肥満を促 
す食生活が構造的に輸入されるという。TPP、日中韓FTA、RCEPとさらなる貿易自 
由化を推し進めようとしている日本とアジア諸国において、これから私たちの食 
生活と健康はどう変えられていくのか。ロンドンで学んできた総括的な食料政策 
の観点から考えます。

講演者紹介:
 平賀緑(ひらがみどり)
 長年NGO活動を通じて自分の食べものを育てる、自分のエネルギーも自分で作 
るための考え方や自立を促す適正技術を紹介。2011年よりフード・マイレージの 
提唱者と言われるティム・ラング氏が率いるロンドン市立大学食料政策センター 
にて学び修士(食料栄養政策)を修得。2013年4月からは京都大学大学院 経済学 
研究科博士後期課程に進学し食料政策および食料の国際政治経済学の研究を続け 
ている。

主催:ATTAC京都
   http://kattac.talktank.net/
   http://kyotoblog.attac.jp/
 お問い合わせ:kyoto@attac.jp

2012年10月20日土曜日

世界社会フォーラム2013(チュニス)への参加をよびかける-マグレブ社会フォーラム運営委員会の声明

 来年度の世界社会フォーラムはチュニス(チュニジア)で3月26-30日の日程で開催されます。
 情報の詳細、登録などは公式ウェブサイトをご参照下さい。
    http://www.fsm2013.org
 以下に、 マグレブ社会フォーラム運営委員会の声明を訳出しました。


世界社会フォーラム2013(チュニス)に関するマグレブ社会フォーラム運営委員会の声明

2012年(イスラム暦1433年)10月7日、モロッコ・ウジダ(Oujda)


  世界社会フォーラム(WSF)2013は、3月26-30日にチュニスで開催される。この決定は、パリおよび2012年7月にモナスティルで開催された国 際評議会での決定にふまえて、チュニジアおよびマグレブ諸国の社会運動の間での数度にわたる協議を経てなされた。この決定について、政府機関にはすでに通 知されている。

 WSF2013の(チュニジア)国内書記局は、下記の団体によって構成される:
  UGTT (チュニジア労働総同盟)
  FTDES (チュニジア社会的経済的権利フォーラム)
  LTDH (チュニジア人権同盟)
  ATFD (チュニジア民主女性協会)
  Raid/Attac
  Tunisian Union of Unemployed University Graduates (チュニジア大学卒業生失業者組合)
  AFTURD (調査と発展のためのチュニジア女性協会)
  CNLT (チュニジア自由国民会議)
  Tunisian Bar (チュニジア法律家協会)

  国内書記局は、モナスティルの会議を準備し、チュニジア政府当局との折衝を開始し、新しい社会運動組織を巻き込むために努力し、フォーラムのテーマと地域 を拡大するために設立された。チュニジアおよびマグレブ/マシュリク地域全体において、この地域を震撼させた出来事からわずか2年の時点において今も継続 している困難にも関わらずである。
 WSF 2013国内書記局は、一連の委員会を設立し、それらはすでに数カ月にわたって活動している。国内書記局はマグレブ社会フォーラム運営委員会に下記の計画を提案し、承認された。


2012年
-10月15日: WSF 2013のウェブサイトの公開と、組織およびアクティビティの提案の登録開始
-12月1日: アクティビティの提案の締め切り、提案の発表(担当者の連絡先を含む)

2013年
-1月2-15日: 提案の統合
-1月16-31日: アセンブリの登録と部屋・スペースの割り当て
-2月1-28日: 最終的プログラムの制作、主要言語への翻訳
-3月1-20日: ロジスティック[宿泊・糧食など]の準備、プログラムの印刷、会場の準備
-3月26-30日: WSF 2013
-3月30日: デモ
-3月31日-4月1日: WSF国際評議会

  マグレブ社会フォーラム運営委員会およびWSF 2013チュニジア国内委員会は、チュニジア、マグレブ、マシュリク、アフリカ、地中海地域、および全世界の運動、労働組合、団体、および市民社会の活動 家グループに対して、この重要な一歩を成功させるために、第12回世界社会フォーラウの組織化および参加を呼びかける。
 これまでのフォー ラムと同様に、WSFは地域や基本的な活動の中で新自由主義的な経済支配、金融市場の独裁、社会の分裂に抗して闘う、また、民主主義の確立のため、すべて の人々の平等のため、連帯、公正、平和のため、環境とコモンズ(共有財産)の保全のために闘うすべての女と男が集う機会を提供する。
  WSF 2013を成功させるために、私たちはすべての社会運動団体に対して、このプロセスの準備に参加し、さまざまな準備委員会(運営方法、ロジスティック、財 政、通信、動員、青年、女性、文化など)の国際化に協力することを呼びかける。より具体的には、私たちは、チュニスのフォーラムへの最大限に広範な参加を 促進するために、人と資金の確保を呼びかける。
 マグレブ社会フォーラム運営委員会およびWSF 2013チュニジア国内委員会は、WSF 2013 において「extended」(拡大)」方式のイベントも組織されることを確認する。このextended方式は、希望する団体、ネットワーク、市民社会 の運動が、世界のどこからでも、チュニスに派遣する代表の数に関わりなく、WSF 2013のアクティ ビティーに積極的に参加することを可能にする。
  マグレブ社会フォーラム運営委員会およびWSF 2013チュニジア国内委員会は、広範な参加を可能にし、WSF 2013を成功させることを目的として、本日以降、労働組合、団体、新しい 運動が全国、地域、大陸、グローバルのレベルで参加できる開かれた、インクルーシブな[包含的な]運営委員会を確立するために広範な協議を進める。
 私たちは2013年3月26-30日にチュニスで開催される第12回世界社会フォーラムの成功を勝ち取るために、一丸となって努力する。もうひとつのチュニジア、もうひとつのマグレブ、マシュリク、もうひとつのアフリカ、もうひとつの世界のために!
 春の果実を実らせるために! もうひとつの世界を可能にするために!

チュニジア国内委員会およびマグレブ社会フォーラム運営委員会を代表して
アブデルラーマン・ヘディリ(Abderrahman Hedhili)

[この声明は2012年10月6-7日にモロッコ・ウジダで開催された「第2回マグレブ移住問題社会フォーラム」において、460人の参加者の前で読み上げられた]
注:マグレブはリビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコなど北西アフリカ諸国、マシュリクはエジプト以東のアラブ諸国を含む地域の呼称である。

2011年9月5日月曜日

【ATTAC京都9月例会】 ATTAC欧州国際会議@ドイツについての参加報告会(延期ぶん)

【転送・転載大歓迎です!】

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【ATTAC京都9月例会】

ATTAC欧州国際会議@ドイツについての参加報告会

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日時:2011年9月10日(土)午後6時~9時

場所:ひと・まち交流館 京都 第4会議室

〔アクセス〕
http://www.hitomachi-kyoto.jp/access.html


報告:春日匠さん(ATTAC京都/大阪大学教員)

資料代:500円

主催:ATTAC京都

協賛:ジュビリー関西ネットワーク、市民社会フォーラム

お問い合わせ先:070-5650-3468

8月に環境都市として世界的に有名なドイツ・フライブルクでATTAC欧州の大規模な会合が開かれ、日本からも ATTACのメンバーも参加しましたので、欧州での議論の状況などについて報告をいたします。フライブルグは市議会議員の3分の2が「緑の党」で占められ ているようにドイツの環境運動の中心都市です。脱原発を決断したドイツ、緑の党が次期政権を担うかもしれないドイツ、ドイツでの国際会議に参加された春日 さんより最新のドイツ情勢やATTAC欧州の活動についてお伺いします。

2011年8月31日水曜日

【ATTAC京都9月例会】 ATTAC欧州国際会議@ドイツについての参加報告会

【お知らせ】
 延期された以下の月例会ですが、
http://kyotoblog.attac.jp/2011/09/blog-post.html
 のとおり、10日に開催させていただく予定です。
 よろしくお願いいたします。


【お知らせ】
 本日夜は関西圏でも台風の影響が大きくなりそうなことから、本日予定されていたATTAC京都の月例会は延期とさせていただきます。延期日程については後日またこちらやTwitterなどでお知らせさせていただきます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

【お知らせ】
台風12号のため、中止する場合もございます。
開催するかどうかは当日16時ごろに
http://twitter.com/attac_jp
で発表いたしますので、ご覧ください。



【転送・転載大歓迎です!】

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【ATTAC京都9月例会】

ATTAC欧州国際会議@ドイツについての参加報告会

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日時:2011年9月3日(土)午後6時~9時

場所:ひと・まち交流館 京都 第1会議室

〔アクセス〕
http://www.hitomachi-kyoto.jp/access.html


報告:春日匠さん(ATTAC京都/大阪大学教員)

資料代:500円

主催:ATTAC京都

協賛:ジュビリー関西ネットワーク、市民社会フォーラム

お問い合わせ先:070-5650-3468

8月に環境都市として世界的に有名なドイツ・フライブルクでATTAC欧州の大規模な会合が開かれ、日本からもATTACのメンバーも参加しましたので、欧州での議論の状況などについて報告をいたします。フライブルグは市議会議員の3分の2が「緑の党」で占められているようにドイツの環境運動の中心都市です。脱原発を決断したドイツ、緑の党が次期政権を担うかもしれないドイツ、ドイツでの国際会議に参加された春日さんより最新のドイツ情勢やATTAC欧州の活動についてお伺いします。

2011年5月26日木曜日

5・28 ATTAC京都 /『脱成長の道』発刊記念イベント 「脱原発」と「脱成長」の正義論 ―原発問題を社会正義の観点から考える-

5・28 ATTAC京都 /『脱成長の道』発刊記念イベント

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   「脱原発」と「脱成長」の正義論
  ―原発問題を社会正義の観点から考える-

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★事故さえなければあなたは原発を認めますか?
★人間であることを奪うヒバク問題としての原発
★どうする東電賠償問題、どうする電力独占体制

日時:2011年5月28日(土)午後4:30~9:00

場所:下京いきいき市民活動センター
(市バス「塩小路高倉」下車東へ、京阪「清水五条」・JR「京都」より徒歩10分)
(アクセス)
http://d.hatena.ne.jp/shiawase_kyoto/20110427/1303869097


★【映画上映】「ぶんぶん通信no.1」(2009年4月/70分/カラー)

「地域を守る人々の意志」

千年続く祭り「神舞」が継承される祝島。島の真正面に計画されている上関原発。島の人々は27年間反対を続けて来た。しかし、計画は具体的に迫ってきた。自然と共に生きる人々と地域の暮らしはどうなるのか?
一方、スウェーデンでは電力の自由化が進み、自然エネルギーだけを選択できる仕組みもとられている。スウェーデンでは持続可能な社会をつくる市民の取り組みがすでに始まっている。そこでは環境NGO「ナチュラル・ステップ」が提唱する持続可能になるためのシステム条件が重要な役割を果たしている。
監督:鎌仲ひとみ プロデューサー:小泉修吉
撮影:岩田まき子 録音:河崎宏一 助監督:南田美紅
上映配給:巖本和道、藤井佳子 制作スタッフ:冨田貴史、村井祥平


★【講演1】「〈脱成長〉の正義論-上関原発建設問題と住民の尊厳」)

1 祝島に根付く贈与の文化──社会の持続的な再生産の論理として
2 原発建設計画と危機にさらされる生態系
3 生存をかけた住民運動が示す日本の経済発展の構造的問題
4 社会正義を再構築する
5 〈脱成長〉社会へ

講師:中野佳裕(なかのよしひろ)さん、国際基督教大学助手・研究員、立命館大学非常勤講師。専攻:開発学、平和学、社会政治哲学。訳書にセルジュ・ラトゥーシュ著『経済成長なき社会発展は可能か?』(作品社、2010年)。最新刊『脱成長の道-分かち合いの社会を創る』(コモンズ、2011年5月刊行)に「〈脱成長〉の正義論」を執筆。
http://www.commonsonline.co.jp/datuseichou.html


★【特別報告】「COP10名古屋における『開催地アピール』採択の意味-生物多様性と脱成長・北側諸国の南への責任」

講師:駒宮博男(こまみやひろお)さん
CBD市民ネット名古屋事務局コーディネーター、ぎふNPOセンター理事長。昨年10月に名古屋で開催された生物多様性条約に関するCOP10において、CBD市民ネットの武者小路公秀顧問(元国連大副学長)とともに、経済成長とグローバリズムを批判し、資源収奪など北側先進国の南側への責任を厳しく問い直す「開催地アピール」を作成した。

COP10/MOP5 開催地住民からのアピール(要約)
http://www.cbdnet.jp/wp-content/uploads/7017c3161a8f84515ee892b406c6b47c.pdf
COP10/MOP5 開催地住民からのアピール(全文)
http://hoerumedaka.seesaa.net/article/165014786.html

(参考記事)
「開催地宣言」素案決まる 国内NGO、経済第一主義批判
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/cop10/list/201007/CK2010070902000141.html

 国内の主要な非政府組織(NGO)で構成する生物多様性条約市民ネットワーク(CBD市民ネット)は8日、名古屋市で10月に開かれる生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、日本の市民を代表して世界にアピールする「開催地宣言」の素案を決めた。
 「経済成長第一主義」や「グローバリズム」が生物多様性の損失をもたらしたと各国の姿勢を断罪し、かつての里山を形成した「集落」のような地域社会の再構築が必要だと訴える。11日に名古屋市内で開く「COP10100日前フォーラム」で発表し、市民意見も募る。
 CBD市民ネットは、日本政府が国際会議で提案した「国連生物多様性の10年」の原案を作成するなど、発言力、影響力がある。素案は同ネットの武者小路公秀顧問(元国連大副学長)と駒宮博男コーディネーターが作成した。
 国際会議で常に対立が浮上する「南北問題」に言及し、生物多様性も「南側」でより損失が激しいと主張。「北側」との格差をグローバリズムが拡大していると指摘する。
 生物多様性を現実に守ってきたのは、その地の地域住民、地域社会と結論づけ、国や国際機関は「脇役に徹するべきだ」と強調。「地産地消」に象徴される生活中心の経済を進め、先住民族や伝統的な地域社会などアジアや、アフリカ、中南米の人々と一緒に「自然とともに生きる知恵」の再発見を呼び掛けている。
 資源に乏しく食料自給率が低い日本は、海外の地域社会に生物資源の浪費を謝罪するべきだとも訴えている。


【講演2】「人間であることを奪うヒバク問題としての原発」(仮)
+「どうする東電賠償問題、電力独占体制解体への道」(仮)

講師:守田敏也(もりたとしや)さん、同志社大学社会的共通資本研究センター客員
フェローを経て、フリーライターとして取材活動中。脱原発運動の他、京都大文字山を中心に、ナラ枯れ防除活動などにも関わってきた。専攻は社会的共通資本の研究。近郊の山を歩きまわり、自然と人のつながりを考察してきた。著作は『山と森にしのびよる「ナラ枯れ」』世界2010年5月号など。
主催:ATTAC京都
協賛:ジュビリー関西ネットワーク、市民社会フォーラム、「幸せの経済学」プロジェクト in 京都
お問い合わせ:kyoto@attac.jp


(『脱成長の道』内容紹介)

脱成長の道
 ―― 分かち合いの社会を創る

勝俣誠、マルク・アンベール編著
本体価格1900円+税
四六判/280ページ
2011年5月
ISBN-10: 486187078X
ISBN-13: 978-4861870781

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格差が広がり,原発が破綻し、
地球環境の限界が明らかになるなかで、
つましくも、豊かで、幸せな暮らしをどう創るか。
簡素な生き方から見えてくる共に楽しく生きられる
<コンヴィヴィアル>な世界を11人が多様に描き出す。

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<目次>

◇ 3・11 フクシマへのメッセージ ◇   
  フクシマからコンヴィヴィアリズムへ アラン・カイエ
  フクシマ原発災害で日本が変わる⁉ セルジュ・ラトーシュ
  楽しい世界へダウンサイジングしよう マルク・アンベール
  一つの文明の終わり 西川 潤 11
  ヒロシマからフクシマまで「だいちとうみとにんげんをかえせ」 勝俣 誠

まえがき 脱成長への道は可能だ マルク・アンベール、勝俣 誠

第Ⅰ部 簡素に生きる

 【1】〈脱成長〉の道──つましくも豊かな社会へ セルジュ・ラトゥーシュ
1 数量化された最大幸福の破綻
2 共愉にあふれるつましさのなかで再発見される幸福
3 〈脱成長〉の〈道〉

 【2】 〈脱成長〉の正義論 中野 佳裕
1 祝島に根付く贈与の文化──社会の持続的な再生産の論理として
2 原発建設計画と危機にさらされる生態系
3 生存をかけた住民運動が示す日本の経済発展の構造的問題
4 社会正義を再構築する
5 〈脱成長〉社会へ

 【3】 南北格差と「南」の豊かさ 勝俣 誠
1 「南」は本当に貧しいのか
2 「南」の内包する二つの豊かさ――認識論からの考察
3 「開発国家」ニッポンの追いつき論の限界――経済学からの考察
4 東南アジアの追いつき論――一九六〇年代初頭の映像『メコン』を手掛かりに
5 「南」の追いつき論の限界――「開発」概念再考の切り口 
6 南は南へ、北は北へ――追いつかなくていい世界に向けて

 【4】 良き生活へどう変えていくか パトリック・ヴィヴレ
1 維持不可能な、過剰な/節度のない生活
2 満たされない心──過剰な生活の原因と産物
3 よりよい分かち合いへ移行するための戦略
4 伝統と近代との対話
5 トランジション・タウンの三脚の論理

第Ⅱ部 コンヴィヴィアリズムが拓く〈世界〉

 【1】 ラディカルな社会主義としてのコンヴィヴィアリズム アラン・カイエ
1 分かち合いの技法としてのコンヴィヴィアリズム
2 コンヴィヴィアリズムの最大の魅力
3 われわれのあらゆる諸悪のいくつかの原因
4 普遍化し、急進化した社会主義へ向けて
5 世界を守る 151

 【2】 生命系と地域主義に立脚した経済の実現に向けて 丸山 真人
1 四半世紀前の問題提起
2 狭義の経済学から広義の経済学へ
3 生産力のポジとネガ
4 生命系の経済と地域主義
5 現実に応用できる広義の経済モデルへ

 【3】 社会主義も資本主義も超えて マルク・アンベール
1 「優れた」社会を再構築するための道
2 社会にとって必要な新しい理想像
3 妥当かつ公平な社会
4 富を創造し、分かち合う社会
  
第Ⅲ部 本当の幸福について考えてみよう

 【1】 社会的責任の分かち合いのための政策的枠組み──未来の展望の再生 ジルダ・ファレル
1 「生活の質の向上」への道
2 熟議に基づく政治メカニズム
3 合意形成と責任

 【2】 生活充足度の新たな指標を地域でつくる ミシェル・ルノー
1 地域別生活充足度指標の作成
2 アンケート結果と作業手続きに関する基礎的な考察
3 相違を明確にし、尊重する

 【3】 生活の質の向上のためのアプローチ サミュエル・ティリオン
1 危機から脱出する眼差し
2 「進歩」を測るアプローチ
3 充足した生活のための八段階
4 市民的かつ民主的知性への信頼

 【4】 日本人が本当に幸福になるために――生活の豊かさの測り方 西川 潤
1 幸福への関心
2 一人あたりGDPと生活の満足度のギャップ
3 幸福度を表す社会指標――国連の人間開発指標の意味
4 区民総幸福度、GNH、足るを知る経済
5 中道こそが幸福への道
6 倫理の再興

あとがき 勝俣 誠、マルク・アンベール

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<著者プロフィール>

セルジュ・ラトゥーシュ(Serge Latouche)
1940年生まれ。経済学者、哲学者。パリ第11大学名誉教授。邦訳書『経済成長なき社会発展は可能か?――〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』(中野佳裕訳、作品社、2010年)。

中野佳裕(なかの・よしひろ)
1977年生まれ。国際基督教大学助手・研究員、立命館大学非常勤講師。開発学博士。専攻:国際開発論、平和学。主論文「ポスト開発思想の倫理――経済パラダイムの全体性批判による南北問題の再検討」『国際開発研究』第19巻第2号、2010年。訳書『経済成長なき社会発展は可能か?――〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』。

勝俣誠(かつまた・まこと)
1946年生まれ。明治学院大学国際学部教授。開発経済学博士。専攻:国際政治経済論、アフリカ地域研究。主著『アフリカは本当に貧しいのか――西アフリカで考えたこと』(朝日新聞社、1993年)、『グローバル化と人間の安全保障――行動する市民社会』(編著、日本経済評論社、2001年)。

パトリック・ヴィブレ(Patrick Viveret)
1948年生まれ。哲学者。元フランス会計院司法官。国際プロジェクト「人間性の対話」共同提唱者。

アラン・カイエ(Alain Caillé)
1944年生まれ。パリ第10大学教授。経済学博士、社会学博士。邦訳書『功利的理性批判――民主主義・贈与・共同体』(藤岡俊博訳、以文社、2011年)。

丸山真人(まるやま・まこと)
1954年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻:経済人類学、人間の安全保障。主著『多元的経済社会の構想』(共編著、日本評論社、2001年)、『アジア太平洋環境の新視点』(共編、彩流社、2005年)。

マルク・アンベール(Marc Humbert)
1947年生まれ。レンヌ第1大学教授、日仏会館内フランス現代日本研究センター長。経済学博士、経営学博士。邦訳論文「人間と社会のための新しい経済学的知に向けて」『情況』2002年10月号。

ジルダ・ファレル(Gilda Farrell)
1950年生まれ。経済学博士。欧州評議会社会的紐帯研究開発局長。

ミシェル・ルノー(Michel Renault)
1963年生まれ。レンヌ第1大学准教授。研究分野は経済思想史、交換の社会関係など。

サミュエル・ティリオン(Samuel Thirion)
1952年生まれ。農学者、社会経済学者。欧州評議会社会的結合・研究促進部局行政官。

西川潤(にしかわ・じゅん)
1936年生まれ。早稲田大学名誉教授。学術博士。専攻:国際経済学、開発経済学。主著『人間のための経済学――開発と貧困を考える』(岩波書店、2000年)、『データブック貧困』(岩波書店、2008年)。